第9回 「北海道の食と健康」
「北海道の食と健康」をテーマに、「第9回よみうりほっと茶論(さろん)」(北海道コカ・コーラボトリング協賛)が19日、読売北海道ビル(札幌市中央区)で開かれた。講師は、北海道東海大学長の西村弘行さんと、農業生産法人「タカシマファーム」(北広島市)の社長高嶋浩一さん。生活習慣病の予防にはどんなものをどう調理して食べるか、安全でおいしい米を作るためにどんな苦労があるか――。2人の“食のプロ”がそれぞれの見解を披露した。
(司会は、読売新聞北海道支社編集部長の飯田政之)
飯田 若年性アルツハイマーが話題になっている。効果的な食品は。
西村 認知症の中でもアルツハイマーは、脳の記憶をつかさどる海馬(かいば)が活性酸素で酸化する、つまり「さびる」ことが一因だと近年の研究でわかってきた。私たちは北海道大薬学部との共同研究で、記憶障害改善に効果のある成分を突き止め、特許を取った。食材はやはりタマネギだった。
効果があるとわかったのはタマネギの中でも硫黄を含んだ成分。この成分を多くする調理法は簡単だ。タマネギの皮をむき、切ってから30分ぐらいおいて、フライパンで中火でいためる。
飯田 では、メタボ対策で内臓脂肪を減らす効果があるのは。
西村 運動をすればいいのだが、運動の際の脂肪燃焼効果を高める食べ物といえば、やはりタマネギだ。ニンニクやギョウジャニンニクも良い。燃焼効果の高いものを食べていれば、運動の持続性が増す。
その証拠に、キムチを食べる韓国人には太っている人が少ない。サッカーの試合でも韓国の選手は後半になってもへたばらない。唐辛子も同じで、こうしたものを食べていれば、ダイエットにもなる。
飯田 北海道米は最近、味に定評がある。コシヒカリに値下げの動きもあるほどだが、農家の現状は。
高嶋 品種改良で北海道の米は確かに人気が出た。食味は本州産と差がなく、相対的に価格は上がっている。ただそれは農家に還元されていない。
日本人が米を食べなくなったからだ。消費が減り、価格はどんどん下がっている。今の農家の手取りは玄米1俵(60キロ)当たり1万1000〜2000円。手取りが一番多かったのは1985年ごろで約1万8000円だった。生産現場は投げやりの状態で、米作りをあきらめる農家も出てきた。
飯田 タカシマファームで直販をやっているのはなぜか。
高嶋 うちは売り上げの95%が米であり、今の手取りでは厳しい。付加価値を付けて、スーパーの価格より高い値で直売しているから、やっていける。
こういう売り方は、何も自分たちだけのためとは思っていない。我々には次世代に生産力ある農地を伝えていく義務がある。米作りが厳しい環境に置かれる中、後継者が育たず、北広島市では農業経営者の平均年齢が70歳代に近い状況だ。皆さんも子や孫のことを頭に入れて、食生活を考えてほしい。
会場 北海道の食材は温暖化でどう変わるのか。
西村 タマネギの例を挙げると、温暖化が進めば、暖かい地域の品種のタマネギが北海道で生産されるようになるかもしれない。
タマネギにはだいたい100品種あり、北海道産は品種にもよるが、本州産に比べて果肉が硬くて辛みが強い。ちなみに、どちらが健康にいいかというと、実は北海道産だ。辛みが強いということは、硫黄成分が多く、それだけ血液サラサラ効果などが高い。
また、北海道は害虫が少ないため、農薬も少ない。本州のタマネギなら30回ぐらい殺虫剤をまくところ、北海道なら数回でいいという地域もある。こうしたことにも影響が出てくるだろう。
高嶋 仲間内でよく聞かれるのは、「ああ、今年はコシヒカリを作ればよかった」という言葉だ。昨年、一昨年ぐらいの気温があれば、コシヒカリとまでいかなくても、「あきたこまち」ぐらいはできただろう。
農業は自然界にかなりの負担をかけている。時期外れの果物や花が出回っているが、石油が化けたようなものだ。輸入した食品も飛行機で届いており、これもかなりのエネルギーを使っている。みんなふんだんにそれを食べているわけだが、いつまで許されるのだろう。我々の孫の時代になっても、そんなことができるのかという感じがする。
会場 (「血流改善タマネギ調理法」で使う)酢について、値段の高い酢と安い酢があるが、効果はどう違うか。
西村 酢のすっぱい成分は酢酸で、値の高いものにはアミノ酸がたくさん入っている。ただ、それによる健康効果はさほど違いない。人それぞれ。黒酢もいいが、私は安い穀物酢1本(500ミリ・リットル入り)80円の製品で十分だと思う。
野菜が活性酸素減らす

食品には三つの機能がある。一つは栄養機能。炭水化物やたんぱく質、ビタミンなどの栄養を取らないと人間は生きていけない。一方、腹が膨れればいい時代から、歯応えや舌触りが良くなければ嫌だという時代になった。それが感覚機能と呼ばれる二次機能だ。三次機能は生体調節機能と言われる。脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの生活習慣病を予防する機能だ。
日本人の食生活が変化し、肉食が普及した結果、血糖値やコレステロールが高まり、糖尿病や脳卒中、心臓病の患者が増えてきた。特に近年、現代人は体内活性酸素が過剰になっており、悪玉コレステロールが酸化されやすくなっている。免疫細胞マクロファージがそれを取り込み、石灰化して血管壁に付着すると、血流が悪くなり、動脈硬化など循環器の病気を引き起こす。野菜類は体にたまる活性酸素を減らす働きがあるので、野菜を多く食べることが大事だ。
日本の伝統食材は健康機能が高い。海藻類のフコイダンという成分は、胃の中のピロリ菌を減らし、胃がんになりにくくする。魚のEPAという成分はコレステロールを低減化し、DHAは記憶力を持続させる。最近は認知症の人も増えているが、予防には魚がいい。お米も栄養バランスがいいが、ご飯だけ食べてもダメ。卵や牛乳、肉などと一緒に食べると栄養価も高まる。重要なのは食べ方だ。
私は「北海道発の健康食材」を研究している。タマネギは血流を改善し、血糖値を下げる。ギョウジャニンニクも動脈硬化系の脳梗塞、心筋梗塞の予防効果が高く、発がん予防の効果もある。原産地がベルギーやオランダのチコリという野菜は、北海道のような寒冷地に適しており、血液がん細胞の増殖を抑えるほか、ポリフェノールも豊富で、動脈硬化系の予防にいい。
南米ペルー原産のヤーコンは、オリゴ糖を多く含む。置いておくと甘くなり、きんぴらにしたり、生で千切りにしてドレッシングをかけたりして食べてもいい。
ダッタンソバ、ハスカップ、アロニアも体にいい。サケの赤身には抗酸化力の高い色素が含まれる。北海道で生産され、健康にもいい食材はたくさんある。
◇西村さんお勧め 病気予防に役立つレシピ
【血流改善タマネギ調理法】(血圧、血糖値、コレステロールの高い人に)
〈1〉3個皮をむき、食べやすい大きさに切って、まな板の上に約30分おく
〈2〉鍋に酢約300ミリ・リットルとハチミツ大さじ3〜5杯を入れて火にかけ、ハチミツを溶かしてから火を止める
〈3〉タマネギを加えて火にかけ、かき混ぜながら1〜1.5分煮る
〈4〉火を止めて、ガラス瓶などで室温保存
〈5〉もずく酢などとあえて、大さじ3〜5杯を食べる
(※西村さんが特許取得)
【男性ホルモン増強タマネギ調理法】(イライラや疲労感、肥満に。女性の乳がん予防にも)
〈1〉皮をむいて丸ごとラップで包み、電子レンジで1.5〜2分加熱(男性ホルモンを増やす成分が確保される)
〈2〉切って料理に使う
(※西村さんが特許取得)
【無臭ギョウジャニンニクギョーザ調理法】(疲労回復に)
〈1〉豚ひき肉に適量の酒や水を加えてよく練り、ラップをかけて室温に近い温度に戻す
〈2〉冷凍したギョウジャニンニクを凍ったまま、手早くみじん切り(凍った状態では、においを発生させる酵素反応が起きない)
〈3〉ひき肉と混ぜてよく練り、他の食材を混ぜる
(以降は通常のギョーザ調理法と同じ。ニラでも可)
アイガモ使い 安心の米



「安全な地元の米を食べたい」という消費者の声に応えようと、1989年、除草剤も殺虫殺菌剤も使わない稲作を始めた。田んぼに這(は)いつくばって草を抜いたり、古い除草機を使ったりしたが、これが大変な重労働だった。
そんな時に友人から誘われたのがアイガモ農法。正直、「カモに草取りさせれば楽かも」と思った。この機にうちの米をブランドとして商標登録し、本格的に始めることにした。
初めのうちは順調だった。以前、除草剤を使っていた田んぼだったので、もともと草が少なかったのだろう。ところが、年々草がひどくなってきた。カモは広葉雑草しか食べないので、最大の雑草であるヒエを食べてくれない。カモを入れる田んぼなのに、年3回、手作業で草を取る。
目が行き届かなくなると、カモが野生のキツネやミンク、トンビなどの餌食になってしまう。
今はアイガモ農法の田んぼを1万8000平方メートルに抑えているが、一時、2万6000平方メートルに広げたら、何十羽とやられた。
そうした外敵からの防御と同時にカモの逃亡を防ぐため、田んぼには電気柵を張る。柵に電流が流れていることをヒナのうちに教えてやる手間もある。
そんな苦労があってもアイガモ農法を続けるのは、ショーウインドーの役割を期待してのことだ。カモが雑草、害虫を食べている現場を見てもらうのは、(米が安心であることが)一番、消費者に伝わりやすい。アイガモ農法を導入しているのは私の20ヘクタールの田んぼの1割弱だが、これでうちの姿勢がわかってもらえると思う。
イネ科の植物は食べないカモだが、稲穂は大好物。稲穂が出るとカモは田んぼから引き揚げ、肥育して肉にする。カモはペットではなく家畜。見学に来る子どもたちにもそう説明している。
もちろん、餌代もかかる。昨年は122羽、その前は170羽ぐらいだったが、カモはとにかく食う。北海道ではカモ肉を食べる文化がないから販売も難しい。それでも最近は認知されてきて、昨年は完売した。
手間はかかるが、きちんとやることをやっていれば、消費者は応えてくれるものだと思っている。
【アイガモ農法】 水田でアイガモを飼育して除草や害虫駆除をさせることで、無農薬・減農薬の米を作る農法。アイガモはアヒルとマガモを交配して人工的に生まれた鳥で雑食性。水田の害虫や雑草を食べるが、イネ科の植物は食べない。このほか、〈1〉カモの排せつ物が有機肥料となる〈2〉カモが泥水をかき回すことで、水田内に酸素を供給したり、稲の根を刺激して成長を促す〈3〉カモ肉の収入が得られる――などのメリットがあるとされる。




