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第28回 「話す喜び 聞く楽しみ」

言葉で心ポカポカ


ゲストの話に耳を傾ける人たち=伊藤紘二撮影

 「話す喜び 聞く楽しみ」をテーマにした「第28回よみうりほっと茶論」(北海道コカ・コーラボトリング協賛)が11月27日、JR札幌駅前の読売北海道ビルで開かれた。STVラジオのパーソナリティーを務める「話術の達人」の巻山晃さん、奈良愛美さんが、言葉で気持ち、考えを伝える楽しさや難しさ、ラジオ番組の裏側などについて語った。後半は、「オハヨー!ほっかいどう」で巻山さんのアシスタントをするSTVアナウンサーの西森千芳(ちほ)さんも加わりトークが行われた。

(司会は、読売新聞北海道支社編集部次長・安永真人)

■大勢の前も「平常心」で


巻山晃さん(まきやま・あきら) 1940年、東京生まれ。明治大学卒業後、64年に札幌テレビ放送(STV)に入社し、アナウンサーとしてテレビやラジオで活躍。2003年に定年退職後も、STVラジオの「オハヨー!ほっかいどう」を引き続き担当し、24年目を迎えた。

 皆さんが色々な場面で交わす「挨拶(あいさつ)」。「挨」と「拶」という字には迫るという意味がある。挨拶は「心を開いて相手に迫っていく」ということで、人間関係の基本となる。自分が常に心を開くことで、インタビューする相手との信頼関係を築き、本音で語ってくれるようになる。45年間の経験でも実感できることだ。

 相手の心を開かせるには、どうすればいいのか。まず誠実たれ。そして、常に対等な立場で真剣に話を聞く。明るく元気に、エネルギーに満ちあふれた話しぶりで、「この人ともう一度会いたいな」と思わせる人間味を持ちたい。

 友達などと一対一でしゃべるのはいいのに、大勢の人前で話をするのは実に難しい。どうして難しいかというと、「自分を良くみせたい」と思う一方、「もし失敗したらどうしよう」という両方の感情が入り交じっているからだ。

 結婚式のスピーチでも、新郎新婦をお祝いしたいというよりも、「恥をかきたくない」「周りの人に受けたい」といった気持ちが先走ってしまう。やはり無理せずに、平常心で余計な事を考えないことが、うまく話すコツなのではないか。

 言葉は、凶器にもなる。炭鉱の爆発事故があった時にこんなことがあった。作業員の身を案じて集まってきた「家族」を「遺族」と中継してしまったのだ。決してあってはいけない間違いで、たった一文字の間違いが、関係者を深く傷つけてしまう。それとは逆に人の心を温かくする言葉もある。

 生放送中には、色々な読み間違いがあって、思わず噴き出してしまうものもある。「旧中山道」を横書きで書いてあったため、「1日中、山道」と読んでしまった例もあるそうで、業界では語りぐさとなっている。

 曲がかからないなどの放送中の思わぬトラブルにどう対処するかに腐心している。競馬中継を長くやってきたこともあり、スタジオにいても、町の中の情景描写などをすることで、何とかつなげる技術を身につけることができた。

 魂の宿った言葉=「言霊」という考え方がある。魂が宿った言葉には、様々な意味が込められている。例えば「生」。日本語で最も読み方が多いとみられている漢字だそうだ。生(なま)ビール、生(き)一本、生(せい)徒、生(お)い立ち、誕生(じょう)など挙げればきりがない。「生きる」ということが大切であることを象徴しているのではないだろうか。


■リスナーの反応 励み


奈良愛美さん(なら・まなみ) 1972年、札幌市生まれ。STVラジオの名物番組、日高晤郎ショーのアシスタントなどを経て、現在、フリーアナウンサー。STVラジオ「オハヨー!土曜日」(土曜午前6〜8時)などでパーソナリティーを務める傍ら、ナレーション、イベント、結婚式の司会業もこなす。

 車内、農作業のトラクター、あるいは台所――。ラジオをどこで聞いてくれているのか、いつも想像しながら、番組をすすめている。スタジオではパーソナリティーやスタッフだけしかいないが、マイクの向こうには、たくさんの人が聞いているということを心がけている。

 例えば、耳で聞いて難しい政治用語がある。ニュースを読む時は、親や祖父母が聞いてくれていると思い、特に意識して話している。ただ、きれいに読むだけでなく、聞いている方々に伝わるように日々、マイクに向かう。ラジオはイメージの世界だから、話す人間を想像できる楽しみもある。はじめてリスナーにお会いすると、「イメージと違う」と言われることが多い。

 以前、子ども向けキャラクターショーの司会もやった。イベントでは、ラジオの仕事とは違い、お客さんの反応がダイレクトに伝わってくる。特に子どもは素直な分、おもしろくないと気が散って、いなくなる。反応が厳しい分、とても勉強になる。単語一つでも、場所によって、伝え方や話し方がそれぞれ違う。

 ラジオは、リスナーからの反応が話す喜びになる。生放送中なら、数分前にしゃべったことに、広い北海道から電話、ファクス、メールで色んな反応を頂く。録音放送でも、後日、手紙が届くこともあり、聞いていただいた方々とキャッチボールができるのが、この仕事の魅力の一つだと思っている。

 番組の時間帯が違うと、年齢層や反応もそれぞれ違う。テレビでは、媒体を通して、リスナー同士がキャッチボールすることは、なかなかできない。大げさだが、ラジオは血の通った、体温を感じられる媒体だと思う。

 学生時代、DJコンテストに自分の声を録音したテープを送ったこともあった。自分もリスナーの一人であることは今も変わらない。毎朝、ラジオを聞きながら、出勤準備をしている。聞く側の目線に立ち続けてこそ、しゃべることができる。また、しゃべるだけでなく、聞き役に回るのも楽しい。それが、自分と向き合うきっかけになることもある。

 スタジオでは外の状況がわからない。ラジオに寄せてくださる情報は、何にも代えられない財産。ラジオは“ながら”の媒体で、皆さんのそばに常にラジオを置いていただき、何かをしながら、耳を傾けていただきたい。


■ハスキーな声 楽器のようなもの/朗読ほめられたことが原点


西森千芳さん

 安永 話すことを職業に選んだきっかけは。

 巻山 小学6年生の時に、先生に国語の教科書を読むのを褒められたことが最初のきっかけだった。中学、高校、大学と放送部や放送研究会に入っていたので、就職の時期にはアナウンサーしかないと思っていた。

 奈良 小学校時代にリポーターの姿をみて、「色々な所に行けてうらやましいな」と思っていた。人と接する仕事が好きだった。

 西森 スポーツもダメで特技はなかったけど、本読みだけは褒めてもらえた。今にして思うと声を出して物事を伝える仕事を選ぶ原点だった。

 安永 きれいな声を保つ秘訣(ひけつ)は。

 奈良 声がハスキーだったので、子どもの頃はコンプレックスだった。でも、今では一つの楽器のようなものだと思っている。ニュースを読む時は、落ち着いたトーンで、お祭りの司会をする場合は明るめにといった具合に、色々な声を出せるのが、仕事の醍醐(だいご)味でもある。

 巻山 声を普段からしっかりと出し続けることが大切。声が安定し、パンチが出てくる。

 西森 学生時代に服の接客業のアルバイトをしていて、お客さんが不快に感じないかどうか勉強した。その経験は今でも役立っている。

 安永 人前であがらないためには、どんなことが必要か。


 巻山 私の場合、仕事だと思うと大丈夫だが、結婚式などで突然スピーチを頼まれると、さすがに緊張する。

 奈良 イベントの司会は、皆さんの顔がみえるし、ラジオでリスナーの皆さんに助けられている。人前だと、相づちを打ってくれたりすると、平常心に戻れる。

 安永 テレビとラジオの番組で大きな違いはあるのか。

 西森 テレビは、話す内容が大体決まっているが、ラジオの台本は大まかな流れが書いてあるだけで、自分の意見や考えを話す機会も多い。私にとっても貴重な経験ができる場だと思う。

 安永 人を引き込む話し方は。

 巻山 特に意識していないが、明るく元気にやろうと決めたら、テンションも変えずに、それに徹してきた。楽しんでしゃべっているという姿が伝わったらいいと考えている。

(2009年12月9日 読売新聞)

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