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■世界遺産の“重み”実感 知床 登録決定一夜明け
地元 祝賀ムード一色 垂れ幕や昆布茶振る舞う
北海道・知床の世界自然遺産登録決定から一夜明けた15日、地元の斜里、羅臼両町は、登録を祝う看板やポスターが掲示されたほか、特産の昆布を使った昆布茶も振る舞われ、祝賀ムード一色に包まれた。一方では、漁業者から知床の自然保護と漁業の両立に対する懸念が示されるなど、世界遺産の“重み”を改めて感じさせる一日となった。
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| 登録決定を祝って振る舞われた昆布茶(午前9時15分、道の駅知床・らうすで) |
斜里町役場正面では、午前6時45分ごろから、懸垂看板の設置作業が始まり、横80センチ、長さ8メートルの「祝 知床世界自然遺産登録」と書かれた看板に取り換えられた。看板を見て、村田良介町環境保全課長は「遺産を遺産に終わらせない。これからやらなければいけないことが無限にある」と決意を新たにした。
同町の商店街では午前8時から、NPO法人「知床みさきの風」(矢久保輝子代表理事)の会員約10人によって、登録を祝う、手作りのポスターが配布された。「おめでとう知床!」と書かれたA3大のポスターは2500枚が用意され、ヒグマやエゾシカが描かれている。決定前に塗り絵ができるポスター1500枚を町内の幼稚園や小学校に配布するなど、登録決定を側面から盛り上げる。内越慎一事務局長は「喜びをみんなで共有し、知床を永遠に世界の宝として残していきたい」と話していた。
知床の玄関口、JR知床斜里駅(小山誠駅長)でも8時50分過ぎに、登録を祝うポスターや看板14枚が披露された。道内を観光旅行している東京都八王子市の無職男性(34)は「知床が世界遺産に登録され、驚いた。知床五湖を見て、ゆっくりと温泉につかりたい。ヒグマも見られたらなあ」と話し、バスでウトロに向かった。
山本忠司駅助役も「世界に誇れる知床になり、本当にうれしい。駅周辺地図の掲示板を作るなど、今以上のサービスをして、皆さんを迎えたい」と満面の笑みで話していた。
羅臼町の「道の駅知床・らうす」には、町や観光協会などの関係者が見守る中、「祝 知床世界自然遺産登録」と書かれた約6メートルの垂れ幕が下ろされた。
続いて、昆布茶が振る舞われ、観光客らが次々と行列を作った。福島県鹿島町の但野領さん(60)、幸子さん(60)夫妻は「ちょうど運が良かった。今晩は泊まる予定じゃなかったけど、ウトロに泊まって世界遺産をじっくり見ていきます」と話し、「ここに住んでいる人たちが生活しにくくならないようにしてほしい」と地元住民を気遣った。
「世界の知床」お出迎え
北海道・知床の玄関口、JR釧網線知床斜里駅(斜里町)では、世界自然遺産登録を祝う看板が掲示され、観光客を出迎えた=写真=。
首相、閣僚ら歓迎の声
知床の世界自然遺産への登録決定に対し、小泉首相や閣僚から15日午前、歓迎の声が相次いだ。
首相は閣議前、各閣僚に「知床よかったね」と話しかけた。細田官房長官はその後の記者会見で、「極めて喜ばしい。今後とも自然環境の保全に努力したい」と述べた。中山文部科学相は「北海道だけでなく、日本全体としてうれしいことだ。これを機にたくさんの人がすばらしい知床の自然に触れる機会が増えればいい」と歓迎した。
北海道を地元とする中川経済産業相と町村外相もそれぞれ、「貴重な財産として知床を大切に守っていく、とても大きなステップになる」「個人的に何度か行ったが、すばらしい場所だ。本当に良かった」などと語った。
漁業者は不安も
漁業者からは、手放しで世界遺産登録を喜ぶ声は聞かれない。
斜里町で刺し網漁を営む菊池光男さん(52)は「保護海域の拡大なども議論されており、規制が広がらないか気になっている。今さら転職なんて考えられないし……」と不安げ。「観光客が増えてごみが増えるのも心配だし、我々漁業者には大したメリットはないのではないか」と冷ややかな見方だ。
羅臼町で刺し網漁と昆布漁をしている長川一さん(38)は「これで地元だけでなく、世界の人の宝の一つになった」と評価する一方、「トドが、網を破いたりタラの頭だけをむしっていったりするから、駆除も大事かなと思う」と複雑な表情。
羅臼漁協理事も務める石田一美さん(46)は「誇らしいことだが、これからの展開が見えず、素直に喜べない」としながらも、「自然が保全されていると、お墨付きをもらったようなもの」と海産物の評価が高まることを期待する。
【世界遺産・知床 大自然に魅せられ】
知床の世界自然遺産登録に、映画「男はつらいよ 知床慕情」でマドンナ役となった女優竹下景子さん、世界的な登山家の田部井淳子さんからも、お祝いの言葉が寄せられた。
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登山のルールの発信地に
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| 登山家 田部井淳子さん |
45年前の学生のとき、女3人で知床岳と羅臼岳に登った。当時はすごい田舎。山を下りると、映画のワンシーンのような、夕日の中で網を引き揚げている風景を見た。「あー、日本にもこんないい所があるんだな」と感動した。
山では、人とほとんど会わず、クマが出るんじゃないかと怖かった。まさか、その大自然が、世界遺産になるとは夢にも思っていなかった。
多くの人が登ると問題になるけど、やはり、山は登らないと分からないから、山には行ってほしい。そして、その山の自然を大事にしなくては、と感じてほしい。
アラスカ・デナリでは、山に登る人を全員集めて、マナーや禁止行為について、1時間みっちり話を聞かされる。知床にも、こんな登山センターのようなものが必要かもしれない。
日本では、自然のものはただという思いが強い。腕章をつけたボランティアが指導しても、「お前に何の権限があるんだ」と言われたりする。
気が遠くなるような話で、時間はかかるかもしれないが、知床から、登山に関するオリジナルな制度を作り上げ、全国に発信してはどうか。ルールを守らない登山者は「知床に来なくてもいい」という考えでもいいと思う。
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海、緑──目覚める野性
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| 女優 竹下景子さん |
87年「男はつらいよ 知床慕情」のロケで訪れた知床。輝く海、そして緑。手つかずの大きな、大きな自然の美しさは今も忘れられない。
湯の滝カムイワッカ。漁船に乗って、100メートルを超す断崖(だんがい)から一気に海に注ぐ滝を見た。隣の渥美清さんが一言。「あの下にいる魚は熱帯魚になっちゃうのかねぇ」。船が揺れるほど笑い転げた。
原生林、すがすがしい空気の中でバーベキューのシーン。新緑のかなたからエゾシカらしき声も聞こえて、忘れていた自分の中の野性が目覚めてくるようだった。人も一個の小さな自然――。
「行くゾーッ」。号令一下、靴を履くのももどかしく浜辺に駆けつけた。目の前に水平線に沈むまっ赤な夕陽(ゆうひ)があった。さっきまでの喧噪(けんそう)はピタリと静まり、ロマンチックな寅さんとのツーショットになった。
知床はかけがえのない宝物。心から思う。
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