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知床特集

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生け捕り 養鹿業者へ

 増え過ぎたエゾシカの食害によって植生に大きな被害が出ている世界自然遺産の知床で、環境省は今冬、東京ドーム3個分の広さに当たる15ヘクタールの囲いわなを2基設置し、エゾシカを一網打尽にする捕獲作戦に乗り出す。今冬は、総計100頭を生け捕りにする目標で、捕獲後は食肉用として養鹿業者に引き渡す。シカ肉は近年、高級食材として需要が高まっているが、供給や品質が不安定。食害対策とシカ肉の安定供給という一石二鳥の試みとして注目されそうだ。

 囲いわなを設置するのは、知床半島西側の斜里町岩尾別地区。冬季に餌のササを求めて、シカが集まる平地2か所に設置し、高さ3〜4メートルの鉄製の柵を巡らす。同省釧路自然環境事務所は「野生動物の捕獲を目的とするわなでは、国内最大ではないか」としている。

 柵は「ヒグマがよじ登っても壊れない」頑丈な作りで、獣道部分に複数の出入り口を設けて、餌の牧草などでおびき寄せ、一定の頭数が入り込んだ後、一斉に扉を下ろす仕組み。初年度の今回は各1回ずつテストを行い、それぞれ50頭程度を生け捕りにする。

 囲いわなの奥には、幅2メートルほどの細長い通路を設けて最奥部にコンテナをセット。生け捕りにしたシカを1〜2頭ずつ追い込んで、コンテナごとトラックに積み、地元の養鹿業者に引き渡すという。

実験で計113頭を捕獲した小型囲いわな(昨年1月撮影)

 捕獲作戦は、知床半島の植生保護などを目的とした第2次エゾシカ保護管理計画(2012〜16年度)の一環として行い、今年度当初予算に盛り込まれている知床生態系維持回復事業費約7000万円を使う。

 シカ肉は近年、ジビエブームもあって、東京や札幌などのレストランで人気が高い。特に養鹿業者が一定期間、肥育したシカ肉は安全で味が良いとされ、需要がピークを迎えるクリスマス前後は品不足になることもある。ある業者は「養鹿の肉は肥育した分だけ売れる。囲いわながうまくいくとありがたい」と期待を寄せる。

 環境省は11年1〜5月、半島東側の羅臼町ルサ・相泊地区で、今回の約100分の1に当たる約1500平方メートルの囲いわなを設置して捕獲実験を行い、計113頭を捕獲するなどして、囲いわなによる捕獲のノウハウを蓄積してきた。エゾシカは知床全体で1万頭以上おり、斜里町岩尾別地区だけで2500頭生息すると推定されている。

 同省釧路自然環境事務所では、「初年度は一度だけの使用だが、状況を見ながら、今後の活用方法を考えたい」と話している。

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