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100平方メートル運動 保全から復元へ

知床の自然と歴史を解説する地上遊歩道のツアー(26日、斜里町の知床五湖で)=黒田高史撮影

 知床国立公園が6月1日、指定から50周年を迎える。知床は2005年には世界自然遺産にも登録され、自然保護と観光の両立を目指した模索が続いている。(黒田高史)

 ◆寄付総額5億円

 国立公園に指定されると、自然公園法に基づき、国が管理し、自然や景観に影響を及ぼす恐れのある行為が規制される。ところが、1970年代には「日本列島改造論」の影響で、国立公園内であるのに知床でも投機目的の土地の転売が行われるようになった。

午来昌さん

 元斜里町長の午来昌さん(77)は、町議時代、買収されていく開拓跡地の保全を当時の町長に直訴し、町は小口の寄付を全国から募り、開拓跡地を買い戻す「しれとこ100平方メートル運動」を決めた。運動は77年にスタートし、97年には延べ4万9000人が参加、寄付総額が5億2000万円に達した。2010年には対象とした約470ヘクタールすべての買い取りを達成した。午来さんは「自然保護でメシが食えるかと、相当ばかにされたことを思うと50周年は意義深い。試行錯誤はあったが、価値ある自然を100年先まで守りたい」と力を込めた。

 運動は現在、原生の森や野生動物の営みを取り戻す「100平方メートル運動の森・トラスト」へと発展した。11年には知床五湖で、観光と自然保護の両立を目指して地上遊歩道への立ち入り人数を規制する「利用調整地区制度」も導入された。ヒグマが活発に活動する「ヒグマ活動期」(5月10日〜7月31日)は、ガイドが引率しなければ立ち入りができない。ツアーに参加した東京都の会社員女性(39)は「クマを身近に感じた。ルールを守るのは当たり前」と、納得した様子で話し、ガイドの鈴木謙一さん(47)は「マナーは規制前より格段に良くなった」と話す。ヒグマによる事故の危険も低下したという。

 エゾシカによる樹皮の食害も課題で、知床財団では、シカよけの柵を設置したり試験捕獲したりして、植生回復を目指している。

 ◆森繁さんも愛した自然 

 豊かな自然や厚い人情にあふれた知床は、歌謡曲や映画、小説などの舞台となった。「知床旅情」を作詞作曲した俳優の森繁久弥さん(故人)や小説家・児童文学作家の戸川幸夫さん(同)は知床とゆかりの深い著名人として知られる。

 元羅臼町助役の志賀謙治さん(90)は、羅臼を訪れた森繁さんや戸川さんと交流した。「2人は原生林や断崖が切り立つ知床半島の雄大な自然を称賛していた。知床の魅力を広く発信してくれ、何より知床を愛してくれた」と語る。

 国立公園に指定された当時は教育長で、住民には「国立公園内に住んでいることに誇りを持とう」と訴えてきた志賀さん。知床が国立公園になった日の感動を、今後も後世に語り継いでいく。(阪本高志)

 【知床国立公園】 1964年6月、国内22番目(道内では4番目)の国立公園に指定された。知床半島中央部から知床岬まで、周辺の海域を含めて斜里、羅臼両町の約6万ヘクタールが公園区域。森林はシマフクロウやオジロワシの営巣地として知られる。

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