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ヒグマの餌付け禁止 生物多様性 条例指定へ…道、違反者名を公表

餌を求めて車に接近するヒグマ(昨年9月、斜里町で)=知床財団提供

 道は鳥獣への餌付け行為を禁止する道生物多様性保全条例の対象に、ヒグマへの餌付け行為を指定することを決めた。世界自然遺産の知床で、餌付けを通じて人とヒグマが接近し、人身事故が懸念されているためだ。指定すると、道は違反者の氏名などを公表できる。道は関係市町村などと意見交換し、来年1月の施行を目指す。

 知床財団(斜里町)によると、知床には数百頭のヒグマが生息しているとみられている。近年は観光客の餌付け目当てで人に近づくヒグマがいることが問題化。餌付けで慣れ、駐車中の車に近づくケースもある。

 昨年9〜11月は斜里町の川を遡上するサケを狙って現れるヒグマを撮影しようと、ヒグマに近づくアマチュアカメラマンが多かった。川岸には、頭と内臓が切り取られたサケが放置されているのも見つかった。ヒグマを誘い出すためとみられる。

 餌付けに関係なく、ヒグマに近づくこと自体が危険なため、財団職員が「接近撮影はやめてほしい」と言うと、「何の権限があって言うんだ」と反抗する人もいたという。

 餌付け行為は危険な上、ヒグマが人里に近づくことにつながる。道などはこれまで、餌付け行為を取り締まろうとしても、サケなどの餌は不要物ではないため、廃棄物処理法で定める「廃棄物」として取り締まれなかったという。

 そのため、道と同財団、斜里、羅臼両町などは昨年から、「知床ヒグマえさやり禁止キャンペーン」を展開。「STOP! えさやり」のステッカーやパンフレットなどで、観光客らに餌付け禁止を訴えてきた。

 条例では、生態系に悪影響を与えたり、人に危害を及ぼしたりする恐れがある場合、鳥獣の対象や範囲などを指定すれば、違反者に餌付けの中止などを勧告できる。今回の指定は、ヒグマを対象にし、範囲は全道とする。道は勧告に従わない悪質な違反者がいた場合、道のホームページで氏名などを公表する。

 知床財団の増田泰事務局長は「指定だけで問題が解決するとは思えないが、知床の現状を広く知ってもらうきっかけになればいい」と期待している。

 【道生物多様性保全条例】道内固有の生態系を維持しようと、2013年3月に制定された。生態系に悪影響を与える恐れや、鳥獣が人慣れを起こす可能性がある餌付け行為に対し、道が防止を呼びかけるなどの措置を取ることが定められている。現行では餌付け行為の対象となる鳥獣は指定されておらず、餌付け行為は禁じられていない。

 ■日光のサル 全国初/ 奈良はカラス/神戸はイノシシ

 鳥獣への餌付けを禁止する条例は奈良市や神戸市などでも制定されている。

 奈良市は2013年10月、カラスの餌やりを禁止した条例を施行。悪質な場合、氏名を公表するほか、5万円以下の罰金を科すこともできる。これまでに氏名を公表した事例はないが、市民が近所で餌付けをしていた人を注意するなど、「効果は出ている」(奈良市環境政策課)という。

 栃木県日光市では1980年代頃から観光客が餌付けをしたことでサルが人に慣れ、食べ歩き客を襲ったり、持ち物を奪ったりする被害が出ている。けが人も出たため、市は2000年、全国初の餌付け禁止条例を制定。現在は餌付けが原因による被害はほとんどないが、土産物店が襲われることがあるという。

 神戸市でも00年頃から市民がイノシシに襲われる被害が増加。市は02年に条例で餌付けを禁止した。氏名の公表や罰則の規定はなかったが、市は今年10月、悪質な場合は氏名を公表できるよう条例を改正。担当者は「市民との接触は餌付けが端緒になることが多い。条例を強化することで抑止につながれば」と期待している。

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